経緯目的 Motive

劣化 NiCd NiMH 充電池を対象に自作定電流定電圧駆動充電器を改良した。

I improved my scratch constant current and voltage charger for deteriorated NiCd and NiMH batteries.

NiCd NiMH 充電器改良 NiCd NiMH charger kaizen process 2016-09-26

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要約 Summary

手元にある FET と OPアンプを用いて,Daiso 取扱の充電器と比較して,過充電のない定電流定電圧駆動の高速充電器製作を目指したが,電池知識のなさと電子回路の稚拙さが露呈して思いのほか改良に時間を要した。その経緯を記述する。


充電回路実験製作 Batteries voltage change charts

AVR
Photo.1 Charger, DIF amp and AVR

定電流回路製作 Constant current circuit

今では廃番の東芝製pチャネル FET 2SJ240 を定電流素子とした。[1] 2SJ240 のゲート電圧は2Vもあれば十分だとわかった。[2] Daiso 充電器は間欠充電で充電時間の割合は 1/3 しかならない。[3] OPアンプ LM324 を用いて定電流回路を組み,抵抗負荷 5.1Ω に対して電流可変特性を 測定してみたところ,奇妙なグラフになった。[4] このとき,その異変さにもっと注意を払うべきだった。駆動周波数は 52kHz だった。

定電圧回路製作 Constant voltage circuit

定電圧駆動には FET 2SK1290 を用い,その参照電圧に精密電源素子を採用した。[5] 2SK1290 の熱損失と定電流検知抵抗の熱損失を比較してみた。[6] 試しに定電流回路を動作させず,定電圧駆動だけでトライしてみたら発振した。[7]



二組回路特性の違い Difference circuit characteristics between 2 pats

私のデジカメは電池2本そしてワイヤレス温度センサの電源も電池2本にしているので,もう一組定電流回路を製作した。電池の片減り現象があるので直列充電は良くない。 この2組目の特性が最初のものとは大違いであった。[8] 回路常数を見直してほぼ同等の2組の定電流回路が得られた。劣化した NiCd 電池を用いて充電器の 定電流回路を実験している間に,過電圧になってしまう。放電器が必要になり簡易放電器を製作した。[9]

実験写真 Experiment photos

これまでの実験の様子を示した。[10]

簡易電池内部抵抗測定 Simple battery internal resistance measurement

劣化充電池と最近使用し始めた充電池の内部抵抗を2種類の抵抗と DMM を用いて計ってみた。[11]

その他 etc

充電完了をタイマにより管理する方法がある。プログラムできる USB 2.0 デバイスがあり,USB 給電による充電器に使えそうだ。[12]  しかし,残念ながら ADC がない。

容量 500mL の樹脂容器を用いて充電器用の箱に選び,その蓋に取り付け穴加工した。[13]

差動増幅器製作 Difference amplifier circuit

充電器および放電器の電流を測定するのに1Ωの電圧降下を計っている。GND を共通にするわけにはいかないので2台の DMM を使用している。DMM の電源は電池なので オートパワーオフの機能があり,所定の時間を経過すると電源は落ちる。

差動増幅器を導入すれば,GND を共通にできるので製作した。差動増幅回路には4本の抵抗が必要になり,その誤差がオフセット電圧となって発生する。 私の使用している金属皮膜抵抗の誤差は1%であるが,テーピング品を使えば誤差の偏差が小さいのではないかと期待した。[14]

単電源オペアンプでも,零ボルト近辺の出力がかんばしくない。結局負電源ICを導入した。[15]

放電器製作 Discharger circuit

DischargerCharger
Photo.2 Charger and discharger

簡易放電器だと,放電電圧を監視していなければならず不便だ。トランジスタ 2SD1412A と 2SA1015 を用いた「気の迷い」の放電器を製作する事にした。[16] Photo.2 に示す右側が製作した放電器だ。

放電流カットオフ電圧チェックに1V以下の電圧が発生可能な自作電圧発生器を用いて,その動作確認をした。[17]

放電器に差動増幅器用にピンヘッダを取付け,DSOを用いて放電電流変化を測定してみた。[18] やはり,自動記録が便利だ。 手持ちの DSO は外部出力がないので,マイコンの ADC を用いてPCに測定結果を取り入れたらいいだろう。

















MCU によるPC取込 MCU measurements transmission

ChargerCurrentChart
Chart.1 Charging current

当初 AKI H8/3694F ボードを活用しようとしたが,ADC の参照電圧を外部にするにはパターンをカットしなければならないし,USB シリアルコンバータも必要になる。 そこで,高精度温度センサ HDC1000 の測定に利用した AVR には内蔵参照電圧 2.56V があるので改造が少なく済むとの判断になった。[19]

プログラミングに AVR Studio を使用している。書き込みライタ AVRWRT が Windows 10 に対応しておらず,デバイスドライバをイレギュラーな方法で認識させた。[20]

AVR ADC には H8 のようなスキャンモードがなく,デバッグに手間取った。AVcc へのキャパシタは若干精度を上げるのに効果がある。[21]

PCアプリは Slip21 を用い,MCU 画面サイズを拡大し,時刻表示に日付も追加した。

Chart.1 に劣化した NiCd3 と NiCd4 に充電した際の充電流変化の様子を示す。このペアは劣化していてもまだデジカメを起動できるほどのピーク電流を供給できる。 電池を入れ替えても,ほぼ同じ値を示すから,両者の偏差は電池状態の違いではなく測定側の問題である。

考察 Check the results

オフセット電圧 Offset voltage

当初 差動増幅器のオフセットはPCに取り込んでから,Calc でそのオフセットを補正するつもりであった。無負荷の状態では,AVR の ADC0 と ADC1 の出力はゼロであるが, 差動器の出力を DSO の Measurement Mean AVG64 で測定すると,-3mV と 6mV である。両者の偏差は 10mV ある。トリクル充電状態になる判定電流をいちいちオフセットを 補正するは面倒である。Slip21 は温度センサの補正する機能をソフト的に組み込んでいる。AVRの方でプログラミングにより補正する方法もある。

無負荷の状態でも差動増幅器の非反転入力端子は入力電圧が分圧され接地される。[22] 定電圧駆動の閾値電圧を 1.45V とすれば, 理論上の暗電流は 22uA にしかならない。差動増幅を形成する4本の抵抗のインバランスが原因だろうか。それともOPアンプ LM324 の入力バイアス電流のせいだろうか。 LM324 のデータシートによれば,MAX −250nAである。入力抵抗とフィードバック抵抗値を一桁下げたところ,オフセット電圧は 8mV から 12mV に増えてしまった。 入力バイアス電流値よりはバイアス電流の差の絶対値で示されるオフセット電流で計算した方が妥当なようだ。その値は Rf*Ios で表せる。[23]

Integral
Photo.3 Integrating OP amplifier output

非反転入力端子抵抗に 330Ω を追加してゲインを下げたら,オフセット電圧は -0.01mV になった。差動増幅回路抵抗のインバランスがオフセット電圧の原因だったようだ。 東北学院のサイトに個別抵抗値を入力して得られるゲインの数式が掲載されている。[24]

定電流値測定 Constant current measurement

容量 2000mAh の NiMH をワイヤレスセンサの電源としたところ,その寿命は意外と短かった。検索すると,放電流だけでなく,充電流の周波数応答特性は思っていたより 良くないとわかった。[25][26] イオン電流の浸透深さが電磁気学の表皮効果のようなものだと思えば納得だ。私のオープンループの定電流回路の駆動周波数は 100kHz を超えるからナンセンスである。これを少なくとも 1kHz 以下に下げなければならない。Daiso 取扱の充電器は 60Hz の間欠充電だから,これ以下に設計する。 フィードバックをかけて応答を遅らせる。積分容量を 0.1uF とすれば,理論周波数は 15.9Hz に下がるはずだ。Photo.3 に示すようにクリップでキャパシタをOPアンプ出力と 非反転入力端子との間に接続し,実測すると 18Hz が得られた。0.01uF だと 209Hz になった。遅延容量を 0.1uF と定めた。

Chart.1 の初期電流をみると,ピークがつぶれている。これはAVR ADC の出力に対して,何ら信号処理をしていないためである。DSO で充電流波形を観察すると,NiCd3 NiCd4 矩形波形になり,ピーク電流はともに 308mA である。周波数は 29Hz である。デューティはおよそ 80% ある。CH1 NiCd3 と CH2 NiCd4 はそれぞれ交番充電が 12,16min 継続した。 充電電力は電流と電圧の積で表されるが,電池の耐圧を考えるとむやみに昇圧はできないだろう。すみやかな充電を考えるなら,デューティを上げピーク電流を下げるのが良い充電なのでは ないか。Daiso の正弦波形による尖頭値と変動する充電流は電池寿命の点から好ましくはないかもしれない。

劣化 Eneloop 充電流変化測定 Constant current measurement

オフセットインバランス調整後,デジカメ電池交換の際,消耗した 950mAh Eneloop の充電流変化を測定してみた。電池無装荷状態の充電流ゼロのオフセット電圧は,CH1/CH2 は -5.2mV/-2.1mV であった。DSO の設定は 100mV/div,1ms/div,AVG:64,Measurement:Mean である。充電開始直後 20:47 の電流波形は周波数 32Hz の矩形で CH1/CH2 のピーク電流は 316mA/282mA で下限は ゼロのオンオフである。オンタイムは 20ms である。

CH1/CH2 に Eneloop E11/12 を装荷している。E12 (CH2) が 21:01 に 直流 222mA 遷移し,その際 DSO 設定を 50mV/div,5ms/div とした。その後 21:26 に同様に E11 (CH1) が直流 222mA になった。その間,E11 には 34Hz 波高値 300mA が流れた。

ChargerCurrentEneloop
Chart.2 Eneloop charging current

翌日 10:25 に電池を取り外し,オフセット電圧を計ると CH1/CH2 は -4.2mV/-4.6mV と同じになった。回路が暖まり安定化したからである。

AVR の ADC 入力の値が一意的に減少する状態後の電流変化の様子を Chart.2 に示す。電流が整定すると,E11 および E21 両者の内部抵抗はほぼ同じである。内部抵抗が同等だからといって, 充電容量が同等か不明である。JISC では 0.1C の定電流により 16時間流すとの定義であるから,充電量がそのまま充電容量になるのかも不明だ。充電容量の劣化判定は放電特性をみるのが現実的だろう。 ただ,整定充電流の増大傾向をみれば,劣化の目安として使えるかもしれない。本充電器は正確な参照電圧発生器を使用しているので,充電時のDC抵抗は正確に計れる。しかし,温度の影響は いかほどだろう。JISC は 20℃ で規定している。充電器を設置している机上の温度は HDC1000 により 28 ないし 30℃であった。

供試 Eneloop は Xbox のワイヤレスコントローラ電源として使用し,寿命が短くなった劣化品である。しかし,GEデジカメを起動するだけのピーク電流を流せる余力があり,新品のアルカリ電池より 内部抵抗は小さいかもしれない。カメラの大起動電流を流す事により,メモリ効果が減殺されたのかもしれない。放電器は一度使用している。

 


課題と結論 Conclusion

低駆動周波数 30Hz による定電流と正確安定した定電圧を可変とする充電器が製作できた。

タイマによる充電終了は継ぎ足し充電ができないのと,電池の劣化と電池容量の違いを区別するのが難儀である。

充電流の常時監視と記録を MCU と Slip21 により行うシステムができたが,とりあえず充電をと考えたため,システムの構成が充電回路, 差動増幅回路および MCU の3枚の基板に分かれてしまった。私ははんだ付けのスキルの関係上,サンハヤトの連結穴のユニバーサル基板を多用するけど,適当な大きさの連結穴基板がない。

充電回路に使用した単電源OPアンプ LM324 の出力電圧上限と下限の制限から,制約された設計となってしまった。オープンコレクタ出力のOPアンプであれば, FET のゲート電圧の動作電圧のマージンが大きくとれた。

充電流検知抵抗と差動増幅器間を 0.2SQ のバラ線で 32cm 配線し,50mV 以下の正確な信号の伝送を期待していなかった。結果的にOKとなった。その理由は差動増幅器の入力回路が 適度なインピーダンスであった事と無負荷時は定電圧の設定電圧が下駄となってノイズの影響が著しく低減したのではと推測する。暗電流効果と下駄電圧のどちらが効果的なのか興味のあるところだが, このプロジェクトを始めたのは昨年 2015 年9月である。他にもやりたい事があるので,このプロジェクトをここで閉じる。若い頃の FET 入力のOPアンプを使用した経験からすると,極端な ハイイーピーダンスのせいか,信号を増幅すると信号源に由来するノイズなのか,OPアンプ自体のノイズなのか悩まされた事がある。

参照 Reference

  1. pMOSFET ゲート回路の検討
  2. 2SJ240 Gate Threshold Voltage 測定 2
  3. 100円ショップの充電器を考える 3
  4. 定電流回路試作 4
  5. 精密電源ICノイズ 5
  6. 定電流素子の損失 6
  7. 定電流回路なし制御トライ 7
  8. 8 充電流波形の異同
  9. 9 充電器製作には放電器がないと不便
  10. 10 定電流充電回路完成
  11. 充電池内部抵抗測定
  12. 劣化した充電池に充電するには
  13. 充電回路箱加工
  14. 差動増幅回路製作
  15. 差動増幅回路製作 1
  16. 充電池用放電回路 1 動作確認
  17. 充電池用放電回路 2 カットオフ動作確認
  18. 放電器 DSOとの組合せトライ
  19. AKI H8/3694 ボード再活用
  20. AVRWRT が起動しない Windows 10
  21. AVR ADC デバッグと AVcc キャパシティ効果
  22. やはりバカヨケは必要だ
  23. OPアンプ回路の設計 p28
  24. 差動増幅回路
  25. イオン電流の侵入深さ
  26. Cole-Cole Plot

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